『アメリカン・スナイパー』
THE MEIGAZA Vol.21
今回の作品は、2014年のアカデミー賞6部門にノミネートされ、音響編集賞を受賞したクリント・イーストウッド監督作品。国を愛し、家族を愛し、戦場を愛した男…米軍史上に名を残す伝説的スナイパーの半生を描いた、衝撃と感動の実話です。
©2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED,
WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
ライフルスコープの先に映る女と子供、それを覗く主人公。不用意にアメリカ軍に近づいてくるこの二人は、民間人か、それとも自爆テロに及ぼうとしている兵士なのか。4度イラク戦争に派兵され、米軍史上最多の160人を射殺したクリス・カイルの初めての戦場。判断を委ねられた彼は、冷静に二人を射殺した。これが伝説の始まりだった。巨匠クリント・イーストウッド監督の歴代最高興行記録を叩きだした本作は、クリス・カイルの半生をシンプルに描き、全米で賛否両論を巻き起こした。1人の良き父親であり、夫でもありたいと願う彼がなぜこんなにも戦場と向かい合わざるを得なかったのか。この作品では、戦場と日常をひとつなぎにするようなさまざまな“距離感”が描かれている。戦場にいる夫と話しているときに、妻の受話器の耳元に突然響く銃声や、ライフルスコープを覗き、望遠で敵を探し彷徨う視線。戦場から帰ってきても、戦闘状態から抜け出せず、ちょっとした(戦場を彷彿とさせる)物音に過敏に反応してしまう心の病(PTSD)。戦争が日常に侵入し、戦争に囚われ、逃れられない運命を歩み始めるクリスの姿が、戦争の悲劇を痛ましく心に焼きつける。近年における戦争映画の白眉とも言える恐るべき傑作です。ぜひご覧頂ければと思います。
7月18日(土)~7月24日(金)
『フォックスキャッチャー』と2本立て上映
『アメリカン・スナイパー』AMERICAN SNIPER
(2014年 アメリカ 132分 R15+)
監督・製作:クリント・イーストウッド
出演:ブラッドリー・クーパー/シエナ・ミラー ほか