【早稲田松竹】12/03(土)~12/09 (金)「教授のおかしな妄想殺人」「ヤング・アダルト・ニューヨーク」
大人だってやはり人間。矛盾のある行動もしてしまいます。今週上映するのは『教授のおかしな妄想殺人』と『ヤング・アダルト・ニューヨーク』。どちらの作品も、そんな迷える大人たちの触れられたくない弱い部分を、ユーモアを交えながらさらっとなでていきます。
教養があり、洗練された人たち、エネルギッシュでクリエイティブな人たちの魅力にほころびが生じる瞬間をこの二つの作品は逃しません。彼らのことを知れば知るほど、うさんくさい部分や薄っぺらい部分が露呈されていく様子は滑稽です。知的な会話と行動のギャップを埋めるためのつじつま合わせに翻弄される彼らに、笑いがこみあげてきます。ウディ・アレン監督、そしてノア・バームバック監督の人間への観察眼が光る良質なブラックコメディです。
けれど、そこでふと気づいてしまいます。そんな会話を笑っている自分も、どこか登場人物たちと同じようにスノッブなのではないかと。彼らの話す内容の笑いどころに気づいて笑ってしまうこと自体、何だか自分自身も滑稽だと感じてしまうのですが・・・。そして何よりそのブラックさに監督たち自身も当てはまっているようにさえ思えてしまいます。自分で自分を笑うような、いたたまれない気持ちになります。
だからこそ、内心穏やかではありません。滑稽な彼らを見て面白いと思ってしまう自分の滑稽さ。他人事として遠ざけてしまうことは難しいのではないでしょうか。そんな複雑な板挟みの中で私ができることは、すべて誤魔化すように「ククク」と笑うことだけだと思っています。
(ジャック)
教授のおかしな妄想殺人
IRRATIONAL MAN
(2015年 アメリカ 95分 )
2016年12月3日から12月9日まで上映
開映時間 10:30 / 14:20 / 18:10
■監督・脚本 ウディ・アレン
■撮影 ダリウス・コンジ
■編集 アリサ・レプセルター
■出演 ホアキン・フェニックス/エマ・ストーン/パーカー・ポージー/ジェイミー・ブラックリー
■2015年カンヌ国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門正式出品
■オフィシャルサイト http://kyoju-mousou.com/
■パンフレット販売あり(700円)
Photo by Sabrina Lantos ©2015 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.
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慢性的に孤独な無気力人間の哲学科教授エイブがアメリカ東部の大学に赴任してきた。そんな彼に教え子ジルは興味津々。ある日、エイブがたまたま悪徳判事の噂を耳にした瞬間、脳裏に突拍子もない妄想がひらめいた! すると、あら不思議、キミョウ・キテレツな“生きる意味”を発見したエイブはたちまち身も心も絶好調となり、超アクティブ&ポジティブ人間に大変貌を遂げる。一方ジルは、彼への恋心をモーレツに燃え上がらせてゆくのだが…。
『ミッドナイト・イン・パリ』でキャリア最高の大ヒットを飛ばした後も、年に1本の製作ペースを保ち、『ブルージャスミン』や『マジック・イン・ムーンライト』で世界中を魅了してきたウディ・アレン。この誰もが敬愛する天才監督は筋金入りのペシミストとして知られ、手を替え品を替え、運命や偶然なるものに翻弄される人間の哀しさ、滑稽さを探究してきた。本作『教授のおかしな妄想殺人』は、そんなアレンのテツガク的集大成というべき奇想天外なダーク・コメディだ。
エイブを演じるのは、『インヒアレント・ヴァイス』のホアキン・フェニックス。人生の謎と不条理を象徴するような主人公をひょうひょうとた存在感で体現する。ヒロインのジル役には、前作『マジック・イン・ムーンライト』でアレン映画の新たなミューズとなったエマ・ストーン。その全身からあふれ出す若さと美しさと知性は、ニュ-ポートの日差しがきらめく映像世界をいっそう輝かせている。
ヤング・アダルト・ニューヨーク
WHILE WE'RE YOUNG
(2014年 アメリカ 97分 )
2016年12月3日から12月9日まで上映
開映時間 12:25 / 16:15 / 20:05
■監督・製作・脚本 ノア・バームバック
■製作 スコット・ルーディン/リラ・ヤコブ/イーライ・ブッシュ
■撮影 サム・レヴィ
■編集 ジェニファー・レイム
■音楽 ジェームズ・マーフィ
■出演 ベン・スティラー/ナオミ・ワッツ/アダム・ドライバー/アマンダ・サイフリッド/チャールズ・グローディン/アダム・ホロヴィッツ
■オフィシャルサイト http://youngadultny.com/
■パンフレット販売あり(720円)
©2014 InterActiveCorp Films, LLC.
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ジョシュとコーネリアは、ミドルエイジの夫婦。ドキュメンタリー映画監督のジョシュは、8年も新作を完成しておらず、アートスクールの講師をしている。いつの間にか人生にも夫婦にも何かが欠けてしまったと感じていた。そんな時、20代のカップル、ジェイミーとダービーと知り合い、クリエイティブに生きる彼らから刺激を受ける。時代に乗り遅れたくないとSNSに縛られる自分たちと違って、レコードやビデオテープなどレトロなカルチャーを愛し、インスピレーションの湧くまま映像を撮りイベントを開催する彼らと付き合ううちに、2人は再びエネルギーを取り戻していくのだが…。
監督は、『イカとクジラ』『フランシス・ハ』のノア・バームバック。ウェス・アンダーソン監督の『ライフ・アクアティック』の脚本を担当したことで注目されたバームバックは、研ぎ澄まされた人間観察力とシニカルな語り口、それでいて登場人物たちへの眼差しにハートフルな温かさを忘れないスタイルから、“ポスト/ウディ・アレンの大本命”とも言われている。
ミドルエイジの夫婦を演じるのは、ベン・スティラーとナオミ・ワッツ。対照的な20代のカップルには、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のアダム・ドライバーと『レ・ミゼラブル』のアマンダ・サイフリッド。2つの世代の成功への夢と野心のぶつかり合いが、リアルかつユーモラスに描かれる。クスッと笑えて、少しほろ苦くて、最後には胸が熱くなる“迷子の大人たち”の成長物語が誕生した。
上映作品によりタイムテーブルが異なりますので、週により開館・閉館時間は異なります。