『ノルウェイの森 (上)(下)』
MY本 Vol.33
ご自身と波長が合うため、ほぼ全ての村上春樹作品を読破したという栗原院長。この本との出合いは、1990年代後半の学生時代に遡る。小説の舞台でもある早稲田で生まれ育った院長にとって、1960年代から70年代を舞台にした「ノルウェイの森」は時代背景こそ約20年異なるものの描かれている情景がとても身近に感じられたそうだ。
物語では生と死のはかなさが描かれ、「死生観」「喪失感」について考えさせる。「当時は医学生でしたが、生と死について深く考えさせられました。第二章の“生は死の対極としてではなく、その一部として存在している。”という言葉に共感し、深く心に刻まれました」と栗原院長は話す。ある意味でストイックさのある登場人物たちにも共感し、生と死、そして人間そのものの世界に引き込まれていったと言う。その後は医師として人々の多くの生と死に触れてきたが、本著で感じたことが人生で壁に突き当たった時に、強く生きるためのモチベーションにもなったと言う。
「その後も数回読み返しましたが、その時の自分の状況や年齢で感じることが変化するところも魅力ですね」と院長。初版から30年を越え、今の20代にとってはすでに生まれる前の小説であるが、デジタルネイティブ世代にとっても、この物語に描かれている人の死生観は永遠に変わらないものなのかもしれない。
Text: ジモア編集部
1987年初版。単行本と文庫で国内累計1000万部以上の記録的大ベストセラー小説。2010年に映画化。
K.T.さん
早稲田中学校・高等学校卒。東京医科大学大学院博士課程修了 地元早稲田で生まれ育ち、勤務医等を経てクリニックを開業。日本体育協会公認スポーツドクターでもあり、クリニック併設のトレーニングジム「Dr.TAKAウェルネスラボ」のオーナー。