第三十八場 ゲスト:乙武洋匡
ジモア宣伝隊長HEY!たくちゃんのババくる!?
ものまね芸人HEY!たくちゃんが、高田馬場で対談! 今回のゲストは、地元育ちで早稲田大学在学中に早稲田まちおこし活動を立ち上げ、『五体不満足』を出版した、文筆家、タレントの乙武洋匡さん。現在進行中のロボット義足開発プロジェクトに興味津々のたくちゃんが、その秘話に迫りました!
2019年3月に開館した早稲田大学戸山キャンパス内の「早稲田スポーツミュージアム」にて。数々の著名アスリートを輩出してきた「早稲田スポーツ」の歴史を語る貴重なユニフォームやグッズ、映像などのお宝に囲まれながら、乙武さんとたくちゃんの対談がスタート!
たくちゃん:乙武さんは、早稲田が地元なんですよね?
乙武:いまも新宿区民ですが、この辺に約20年住んでいました。 都立戸山高校から早稲田大学に進学したので、高校、大学の青春 時代を過ごした街として思い出を語りだしたら一晩じゃ済まない くらいですね。
たくちゃん:お気に入りのお店ってありますか?
乙武:「三品食堂」が好きでよく通っていました。メニューは、カツ と牛めしのミックス「かつ牛」が常食でしたね。
たくちゃん:けっこうボリュームありますよね?
乙武:ここでランチを食べちゃうと、家で晩飯が食べられないく らいでした(笑)。
たくちゃん:最近は来ることありますか?
乙武:友人が早稲田でスーパーを経営しているので時々来ま す。でも、最近は学生時代に馴染んだ早稲田の名店が次々と閉 店してしまって寂しいですね。
たくちゃん:昔、早稲田のまちおこし活動をしていたんですよね?
乙武:大学3年の時、早稲田大学周辺商店連合会と共に友人とまち づくり活動のお手伝いをしたことがきっかけで『五体不満足』を執 筆しまして、それが私の原点ですね。立ち上げメンバーの私と友人 が大学を卒業する時に大学公認サークルになり「まっちわーくグ ループ早稲田」として今も後輩たちが活動を継承してくれています。
義足プロジェクトで40歳過ぎた体に鞭打つ日々!?
たくちゃん:僕、高校生の時、書店で『五体不満足』の表紙を見てインスピレーションで買いました。高校生ながら「これで世の中が変わるかもしれない」って感じたんです。自分の経験に重なる部分があって、「ああ、負けず嫌いでいいんだ、劣等感をバネにすればいい」って気づかされました。
乙武:ありがとうございます。
たくちゃん:乙武さんはいま、ロボット義足開発のプロジェクトに挑戦してるんですよね。今年の東京オリンピック、パラリンピックに向けて大事な要素になって来ると思うんです。それこそ世界が変わるんじゃないんですか?
乙武:おっしゃる通り社会が変わる分岐点になりうるプロジェクトだと思います。これまで、障がい者の社会参画には「人の意識を変える」「制度を変える」ことが重要だとして活動してきましたが、ここ数年で「テクノロジーを取り入れる」という方法があると感じ始めたんです。
たくちゃん:義足って着けてすぐに歩ける訳ではないんですね。
乙武:そうなんです。義足を装着して歩行練習を始めた時、立つのもままならなくて……。私の体は、常に座っているのでL字型に固まっていて、立った瞬間は真っ直ぐにできるけど、歩きだすと体が前のめりになってバランスが崩れるんです。体が自然にL字に戻ろうとするからなんです。
たくちゃん:筋肉トレや減量もしてるんですって?
乙武:はい。体重を軽くすると、前のめりになりにくくなるんです。でも、食べることが好きなので体重を落とすのは大変です。
たくちゃん:義足プロジェクトの奮闘記『四肢奮迅』に、「40歳過ぎて何やっているんだろうって思った」と書いてあって、笑ってしまったんですけど。
乙武:アスリートでもないし、体を動かす習慣もなかったから、プロジェクトのための日々のトレーニングはとてもハードでした。でも、テクノロジーの可能性を世間に強く印象付けるためにも、40歳過ぎた体に鞭打って頑張っているところです(笑)。
たくちゃん:完全にスポーツですね!
乙武:今回、初めて理学療法士さんの指導を受けたのですが、何カ月も出来なかった問題点を一発で指摘され、その仕事の凄さを知りました。
たくちゃん:10年前、義足を履いて歩行する写真を撮られるなんて予想してましたか?
乙武:いやいや、夢にも思わないですね。もう、五体不満足じゃなくなりますね(笑)。
価値観逆転、遊びが仕事に!? まさかの未来が現実に?
たくちゃん:技術の進歩って凄いですよね。20年前はスマホを使うなんて考えられなかったですし、ユーチューバーなんて職業が生まれるとは想像もつきませんでした。時代はもの凄い速さで変わっていくことを意識しないといけないですね。
乙武:eスポーツが流行ってますよね。これまではゲームをしてると親に怒られてたわけですが、これからはゲームを極めることで1億円プレーヤーになれる可能性が出てきたんです。もしかしたら「ゲームばかりしないで勉強しなさい!」って言っていた親御さんが、「勉強ばかりしないで、もっとゲームしなさい!」って言う時代が来るかもしれないですよね(笑)。
たくちゃん:アハハ、そうですよね! プロゲーマーも職業ですもんね。でも、最近「AI に仕事とられるぞ」ってよくいうでしょ、職人技が要る仕事もAIやロボットに取って代られる不安はあります。
乙武:選べることが大事だと思います。消費者の中には、何年も修行を積んだ職人の仕事が欲しい人、熟練の技は特に要らない人、それぞれの考えがあると思うので……。
たくちゃん:紅白歌合戦に、美空ひばりさんの声や姿を再現した「AI 美空ひばり」が登場しましたが、芸能界にもいよいよAIの脅威が……。
乙武:確かにAIの再現性は凄いと思いますが、美空ひばりさんという素晴らしいタレントの存在があるからこそ、再現するAIの価値が出てきたということなんです。重要なのは、やはり人間なんじゃないかと思います。
乙武さんが理想とするダイバーシティ社会とは?
たくちゃん:乙武さんは、著書やメディアでLGBTについて触れてますよね。僕、フードショーに出店するためにニューヨー クに行った時、現地のお笑いライブを観たんです。ゲイ をジョークにしたネタが意外と多いし、観客がすごく 笑ってるので「アメリカは寛大だな~」って感じました。 でも最近の日本もかなり寛大ですよね?
乙武:日米では寛大さの種類が違うと思います。日 本は寛大というよりも鈍感というのが相応しいの かな。何故かというと、そのギャグで傷つく人がいることを可視化し ないうちに使ってしまっている傾向にあるからです。一方、アメリカで はゲイであるという事があまり社会的不利益に繋がらないから、笑 い飛ばしていいという世情だと思うんですよね。
たくちゃん:日本では、太ってるとか禿げてることをネタにするのに 比べ、LGBTをネタにするのはまだ厳しいですか?
乙武:日本ではLGBTの存在が社会的に完全には認められてなく て、親から勘当されたり、就職口が見つかりづらいなどの不利益を 被る可能性が高い。だから、ネタにされると傷つく人がまだまだ多 いと思うんです。
たくちゃん:なるほど。実は、僕のラーメン店の面接に女性が来たん ですけどね、履歴書の名前が男性なので驚いて確認したらLGBTの 方だったんです。すぐに「合格!」って言っちゃいましたけどね(笑)。
乙武:ヘイタクさんはその方を通してLGBTの方の気持ちや感じ方な どを知ることが出来るというのは大きいですよ。こうして多様性への 理解が深まっていくと思うんです。世界を旅しているときに滞在した ロンドンでのことなんですが、地下鉄 駅のうち3割くらいしかエレベーター が付いていないにも関わらず、車い すの人達はガンガン出かけるんです。 なぜなら、誰かが車いすを抱え上げ て助けてくれるからです。日本では、 気にはなるけど“手伝い方がわから ない、逆に迷惑をかけたら怖い”とい う理由で見て見ぬふりをしてしまう。 これは決して冷たいからではなく慣れてないからなんです。日頃から 障がい者の方と接して、どういうサポートが必要か分かれば、手助け が自然にできる社会になると思います。
たくちゃん:すごく勉強になりました。今後、新たにやりたい事はあ りますか?
乙武:日本を多様性のある社会にしていきたいという思いで、本を 書いたり、TVに出たりしてきました。そこは今もブレてなくて、やら せていただいていることが目標につながると信じて、声がかかる限り、いろんな事に取り組んでいくつもりです。
物腰が柔らかく、理知的で笑顔が素敵な乙武洋匡さん。乙武さんの言動から感じる“丸み”を、ラーメン職人の視点で「まるで塩ラーメン」と形容するたくちゃん。温かく、優しい、丸みのある視点で、技術革新の可能性や世界の実情を発信しながら、多様化社会の相互理解を追求する乙武さんの活躍から目が離せません。
Text: 櫻井実由莉
Photo: 石森 亨
ロケ地:早稲田スポーツミュージアム
ゲストプロフィール
1976年生まれ、東京都出身。早稲田大学在学中に出版した『五体不満足』が600万部を超すベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。その後、小学校教諭、東京都教育委員など歴任。現在は『AbemaPrime』で金曜MCを務める。11月1日に、義足プロジェクトの全容を追った『四肢奮迅』(講談社)が発売。
公式サイト
http://ototake.com/
「乙武洋匡の七転び八起き」
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