『毛皮のヴィーナス』
THE MEIGAZA Vol.20
今回の作品は、カンヌ国際映画祭の正式出品作で、セザール賞最優秀監督賞を受賞した話題のフランス映画。 『戦場のピアニスト』でアカデミー賞に輝いた鬼才にして巨匠、ロマン・ポランスキー監督のセンセーショナルな最新作です。
©2013 R.P. PRODUCTIONS - MONOLITH FILMS
豪雨の中、古い劇場の扉が開くと、そこは『毛皮のヴィーナス』のオーディション会場。女が現れたとき、すでにオーディションは終わり、演出家はぱっとしないオーディション女優たちへの悪態をついていた。一見して下品で強引な態度をとる謎の女に興味のない彼だったが、稽古にしぶしぶつきあうことに…。
アメリカで大ヒットした同名戯曲の映画化作品だが、その戯曲は劇中の演出家・トマが翻案し上演しようとしているザッヘル=マゾッホの著作「毛皮を着たヴィーナス」を基に作られている。しかも、監督(ロマン・ポランスキー)と女優(エマニュエル・セニエ)が夫婦であるだけでなく、演出家を演じる俳優が映画監督としても活動するマチュー・アマルリックだという、妙に因縁深い二段仕込み。台詞をしゃべり始めた途端に気品と優雅さを醸しだし、売れない下品な女優から、いつしか演出家をも凌駕するほどに冴えわたる感性を発揮する知的な女性へと変身していくワンダに魅了され、支配されはじめるトマ。自分の意中の人に支配されることを望む、あの“マゾ”の語源にもなった作家の倒錯の世界が、現実と虚構をない交ぜにしながら、演出家と女優という関係力学をもまた転倒させていく。天才監督ポランスキーによる、軽妙かつ魅惑的な、魔法のような一作です。
4月25日(土)~5月1日(金) 『チャイナタウン』と2本立て上映
『毛皮のヴィーナス』VENUS IN FUR (2013年 フランス/ポーランド 96分) 監督・脚本:ロマン・ポランスキー 出演:エマニュエル・セニエ/マチュー・アマルリック 第39回セザール賞最優秀監督賞