『新しい価格革命 ー試練に立つ現代資本主義ー』著者:宮崎義一/岩波新書刊
MY本 Vol.25
根来教授がこの一冊に出会ったのは京都大学で哲学を学んでいた頃。大学での文献研究を中心とした哲学科の学びに興味を失いかけ、社会を正しく見る方法を模索していた。そんな時、社会科学に関わる本を貪り読むなかでこの一冊に出会ったという。
1975年に刊行された本著は、一つの時代の終わりの部で「パニックの社会経済構造」として、石油危機に伴うトイレットペーパー・パニックや豊川信金の取り付けパニックなどの社会現象を実にわかりやすく説明している。「当時の社会現象を扱う本やコラムはたくさんありましたが、理論に基づいたその説明の手法が素晴らしかった」と根来教授。この本との出合いは、当時の根来青年に大きな影響を与えることとなる。実社会を知ることが重要であると感じ、哲学者をめざすという進路を切り替え社会に出ようと決意をするきっかけとなったのだ。
経営学者として大学教授となった今でもこの本のことは常に頭の片隅にあり、その鮮やかな“説明”を意識し、理論と現実の関係をいかにわかりやすく説明するか、という問題意識の実践を試みているという。刊行から40年を経ても、人に影響を与え続ける本著の社会現象への説明方法はいまでも色あせず生きている。社会科学方法論について興味がある人には、きっと多くの示唆を与えてくれることだろう。
理論経済学者の著者がパニックや価格革命など、資本主義の問題点に明解な説明で切り込んだ一冊。
早稲田大学大学院
経営管理研究科(WBS)研究科長
根来 龍之さん
京都大学文学部哲学科卒、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て、2001年より早稲田大学教授。早稲田大学IT戦略研究所所長、経営情報学会会長。『ビジネス思考実験』など著書多数。
★根来龍之研究室
http://www.wbs-negolab.com/