【閉店】豚ジンジャーキッチン こうぞう

楽食厨房 Vol.18

絶品「しょうが焼」のススメ

都電荒川線早稲田駅から、グランド坂を上ること1分ほどのところに開店した「豚ジンジャーキッチンこうぞう」。店を構えるのは阿部展大さん。フレンチの巨匠・阿部浩三氏を父に持ち、母、兄弟らが「辻調理師学校」卒という料理人一家でありながら、元スーパーフェザー級日本12位のプロボクサーという異色の経歴を持つ若きオーナーだ。

彼はボクサー時代、体重コントロール中、いつも食べたいものをイメージすることを、トレーニングの励みとしていた。そこで引退後サラリーマン生活を経て、自分の納得するしょうが焼を作りたいと思い、店を出したという。

　「肉は業者を数社回り、アメリカで日本向けに作られた三元豚(三種の品種の交雑種)を選びました。ジンジャーソースは、玉ねぎにこだわりがあり、甘味が強い淡路島産を使っています」。そう語るオーナー自慢の、豚ジンジャーステーキ定食(1,080円)を食べると、濃厚な匂いが口の中に広がった。ありがちな、刺すようなしょうがの匂いではなく、まろやかで、それでいてしっかりしたしょうがの匂いだ。それがクセのない肉の味にしっかりとからむ。元アスリートが考えたしょうが焼きは、誰もが納得する味に仕上がっていた。