『MBA-アメリカのビジネスエリート』
MY本 Vol.36
澁谷教授がこの一冊と出会ったのは東京電力に入社して4年目の頃。「当時は法務関係の部署で、経営学にもまったく興味がなく、MBAという言葉さえも知りませんでした」と語る澁谷教授は、池袋の書店で立ち読みする中で偶然この本を手に取ったそうだ。
本著はアメリカのミシガン州立大学のMBAプログラムに留学した時の体験談を中心にMBAの現状や、日本でのMBAについて語られた自伝的な本。冬のランシング空港に降り立った著者が、人っ子ひとりいない休暇中のキャンパスで途方にくれる小説のようなシーンは、何かが始まる、何かが変わる、という転機を表現しているようで若かりし澁谷氏の心に強い印象を残した。この本がきっかけとなり、社内の研修制度に応募し、著者である和田教授が教鞭を執る慶應MBAを取得。数年後の30代前半には、会社を退職し、和田研究室の博士課程に進学。経営学者と教員の道を歩み始めることになっていったという。
「読んだ当時は、自分では気が付かない興味の余白が心の隅にあったのかもしれません。まさにこの本との偶然の出会いが人生を変えるきっかけでした」と話す澁谷教授は、経営学に興味のない人にこそ読んでもらいたいと話す。この本は、きっと今の生活や仕事にちょっとした余白がある人々にとって、新しい価値観、新しい人生への道しるべになるのかもしれない。
Text: ジモア編集部
慶應義塾大学MBA創設者の一人である著者が、ミシガン州立大学MBAプログラム留学時代を語った自伝的MBA生活体験記。
学習院大学 国際社会科学部 教授 澁谷 覚さん
東京大学法学部卒。東京電力勤務を経て、慶應義塾大学経営管理研究科(MBA)修了。同大学博士課程を満期退学し、2003年博士(経営学)取得。新潟大学助教授、東北大学大学院教授等を経て、2016年より学習院大学教授。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師も務める。マーケティング、消費者行動に関する著書多数。