『バーニング 劇場版』
THE MEIGAZA Vol.37
今回の作品は、村上春樹の短編『納屋を焼く』を映画化したイ・チャンドン監督8年ぶりの新作。「第71回カンヌ国際映画祭」コンペテ ィション部門に正式出品され 、国際批評家連盟賞を受賞したミ ステリ ーが早くも早稲田松竹で上映です。
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小説家を目指しながらバイト生活をするイ・ジョンスは、ある日デパートの前で広告モデルをする幼馴染のシン・ヘミと偶然の再会をする。すっかり美しくなったヘミは、パントマイムを習いアフリカ旅行を計画中という。ヘミに惹かれ、ジョンスは旅行の間、猫の餌をやりに彼女の部屋に通うことになるが、餌は減れども猫の姿は一度も見たことはなかった。帰ってきたヘミはベンという男と親密になっていた。高級車にお洒落なマンション、自分たちよりもはるかに豊かな彼の暮らしぶりにヘミを心配するジョンスに、ベンはある悪癖を告白する。「僕は時々、ビニールハウスを燃やしています」。ヘミが姿を消したのはその数日後だった。
韓国を代表する小説家・映画監督であるイ・チャンドンの待望の新作は村上春樹の『納屋を焼く』の映画化である。監督は原作を韓国に置き換えるだけでなく、現代の韓国社会と向き合い、貧富の格差や消費社会の裏側にある人々の感情の襞を掬い取って、複雑な問題を一つの答えに完結させることのないミステリアスかつ豊かな物語世界を紡ぎあげた。北朝鮮との国境線の隣にある町の田園風景の中で、アフリカで覚えたダンスを踊るヘミの姿。空虚な現実と生命力が交じり合うコントラストが、物悲しくも優しく力強いイ・チャンドン監督作の最良のシーンたちを思い出させる。最高傑作とも名高い本作をぜひ劇場でご覧頂ければと思います。
7月27日(土)~8月2日(金)
「シークレット・サンシャイン」「オアシス」とイ・チャンドン監督特集上映
『 バーニング 劇場版』
(2018年 韓国 148分 PG12)
監督 イ・チャンドン
出演 ユ・アイン/スティーブン・ユァン/チョン・ジョンソ
2018年カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品・国際批評家連盟賞受賞