『スパイの妻<劇場版>』WIFE OF A SPY
THE MEIGAZA Vol.44
今回は太平洋戦争前夜を描き、国内17年ぶりとなるヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞した黒沢清監督作品。 NHK BS8Kで放送後、2020年秋に劇場版が公開されたばかりの話題作が、早くも早稲田松竹に登場です。
©2020 NHK, NEP, Incline, C&I
太平洋戦争前夜、1940年の神戸。貿易商を営む福原優作(高橋一生)と妻の聡子(蒼井優)は瀟洒(しょうしゃ)な洋館に暮らし裕福な生活を送ってた。しかし優作が事業で満州に出向いた頃から不審なことが起き始める。仕事柄外国人と交渉し、禁制になっている舶来品のウィスキーを嗜むような外国の文化に通じる彼らの暮らしは、戦争が近づくにつれて周囲から疑いの目で見られ、優作にスパイの容疑が持ち上がるのだ。今まで通りの穏やかで幸福な生活が崩れていく不安のなか、聡子は優作が満州から持ち帰った秘密を知りある決意をする。
名匠黒沢清監督をはじめ、先日最新作『偶然と想像』がベルリン映画祭で審査委員特別賞を獲得した濱口竜介が脚本を務めるなど日本の才能が結集した本作。太平洋戦争中の日本軍731部隊の生体実験という過激なテーマを扱いながら、ミステリースリラー、メロドラマとして複数のジャンルの形式を踏襲した良質なフィクションとして仕立て上げられた本作は世界中で絶賛された。NHKの8Kドラマとして製作されたことからアカデミー賞に絡むことはなかったが、第77回ヴェネチア国際映画祭では国内17年ぶりの銀獅子賞(監督賞)を受賞。サイレント期から連なる日本映画と日本史の記憶を横断する紛うことなき現代日本映画が誕生した。この歴史的快挙を是非お見逃しなく。
4月24日(土)~4月30日(金)
「空に住む」と2本立て上映
スパイの妻<劇場版> WIFE OF A SPY
(2020年 日本 115分)
監督・脚本 黒沢清 脚本 濱口竜介/野原位
出演 蒼井優/高橋一生 ほか
第77回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞