THE MEIGAZA Vol.56 〜早稲田松竹 映画コラム 〜 『夜明けのすべて』
THE MEIGAZA Vol.56
10/26(土)~11/1(金) 『夜明けのすべて』
今回ご紹介するのは『きみの鳥はうたえる』(2018) 『ケイコ 目を澄ませて』(2022)など、常に魅力的な作品を発表し続ける三宅唱監督の最新作『夜明けのすべて』です。「そして、バトンは渡された」などで知られる人気作家・瀬尾まいこの同名小説を原作に、自分ではコントロールすることのできない心の病に苦しむ男女の関係を描く。男女といっても、恋愛関係には発展しない。まったく大げさでも劇的でもないのに、多くの人をじんわりと感動させるその関係性がこの映画の見どころです。
PMS(月経前症候群)のせいで月に1度イライラを抑えられなくなる藤沢さんと、転職してき たばかりでパニック障害を抱え生きがいも気力も失っている山添くん。職場のみんながあたたかく見守ってくれてはいるけど、本人の生きづらさは人に説明もできないもの。ただ、同じ ような苦しみを抱えている同士が、相手の病気について勉強したり、気遣ったりすることから自分自身が抱えるやりきれなさをも少しずつ乗り越えようとする思いやりに支えられた物語です。この映画の作り方も、この映画の物語を支える意志と同じように、人を傷つけずに回復 する場所がこの映画自体で あるようにと隅々までやさしさに溢れています。誰にでもおすすめできる素敵な作品。ぜひ誰か身近な人とお誘い合わせの上、ご鑑賞 いただければと思います。
10/26(土)~11/1(金)
★『違国日記』と二本立て上映
『夜明けのすべて』
2024年/日本/119分/DCP
©瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会