副都心線西早稲田駅から徒歩5分、馬場口交差点から早大方面に向かう早稲田通り沿いの ビル2階に、魚料理でひときわ評判を集めるお店「小鉢や梵」がある。魚は三崎港から直送。鮮度にこだわり、調理にこだわり、店主が自信を持って提供する料理の数々は高級料亭にも引けを取らない。運ばれてくるや否や、思わず声を漏らしてしまいそうな料理の存在感は見るだけで食欲をそそる。それでいて平均予算は2,500円とかなりリーズナブル。最高の魚料理が安く楽しめるとあって夕方17時の開店とともに、早速お客様がやってくるという、地元住民に愛されるお店なのだ。鮮魚の刺身に旬の野菜。抜群の素材を用いた本格的な和食料理をご堪能あれ。
(掲載日:2013年3月25日)
何と言ってもこの店の売りは、産地直送の「魚」。「半径3キロ以内ならどこよりもうまい」、そう語る店主の言葉に迷いはない。調理のこだわりを尋ねると、「薄味です!」とシンプルな答え。素材を最大限に活かし、味付けは控えめに。余計なことは一切しない。本当においしい魚を使っているからこそできることなのだろう。魚だけではなく、もちろん野菜でもその時の旬のものをご提供。手を加え過ぎないというのはこちらも同様で、素材本来の味を大切にするというのはこの店の一貫したコンセプトのようだ。
和風をテーマとし、黒い机と黒い椅子で統一されたカウンター席やテーブル席。それに加えて、インド風の空間を目指しているという座敷席もある。サンスクリットに由来する「梵」ならではの空間づくりだ。そんな店内に流れるBGMはなんとレゲエ。一見、不思議な組み合わせのようにも思えるが、もちろんこれも店主の狙いがあってのもの。「逆に落ち着いた雰囲気で、和やかな気分になれるんですよ」とのこと。本格的な和食料理をレゲエで食べる、こんな粋な体験はほかではなかなかできないだろう。
「小鉢や梵」の大きな特徴は、自由度の高い豊富なメニューだ。お品書きに並んだ魚は二日に一度変わり、訪れる人を飽きさせない。さらにこのお店、実はメニュー表にない、裏メニューが多数存在する。手が空いているときには、スタッフに希望を伝えればその通りに、あるいはその時のおすすめ食材を使った店長オリジナルの料理を作ってくれるのだ。自分が食べたい料理を、気兼ねなく注文できるのがいい。通い慣れた人の中では、むしろ自由に注文する方が主流だという。ここには思いもよらない新しい美味との出会いが、きっとある。
「小鉢や梵」の客層の特徴として、常連の多さが挙げられる。それもそのはず、一度食べたら、美味さにハマって多くの人が常連になるのだそうだ。絶品の和食料理が、手ごろな値段で味わえて、なおかつメニューにない好きな料理までその場で注文できる。「こんにちは」ではなく「ただいま」と、まるで自宅のように入ってくるお客さんが多くいらっしゃることからもうかがい知れる。そしてお店のスタッフは、「おかえり」とお客様を迎える。人と人との温かみのあるやりとりは、料理をよりいっそうおいしくしてくれる。ついつい足しげく通ってしまうのも頷ける。
どれもこれも魚好きの舌をうならせる品質であるが、特に秋冬のイチオシは金目鯛とのこと。大根、茄子、キノコもまた秋から冬にかけての季節にオススメだそう。「ぜひ、魚が好きな人に来てほしい」、と終始語る店主。言葉の端々から味に対する自信がうかがえた。 「本物の味」を求める人にはぜひ一度足を運んでみてもらいたい。きっと二度三度と通いたくなってしまうことだろう。そうして気づいたときにはもう、あなたも「常連」の仲間入りをしているかもしれない。(取材・文 中嶌恵)
平日 17:00~24:00(L.O.23:30)
土曜 17:00~23:00(L.O.22:30)
日曜