【早稲田松竹】11/28~12/4|『バードマン』『セッション』
早稲田松竹映画劇場(ルー)
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
BIRDMAN OR (THE UNEXPECTED VIRTUE OF IGNORANCE)
(2014年 アメリカ 120分 DCP )
2015年11月28日から12月4日まで上映
開映時間 10:00 / 14:15 / 18:30
■監督・製作・脚本 アレハンドロ・G・イニャリトゥ
■製作 ジョン・レッシャー/アーノン・ミルチャン/ジェームズ・W・スコッチドープル
■脚本 ニコラス・ヒアコボーネ/アレクサンダー・ディネラリス・Jr/アルマンド・ボー
■撮影 エマニュエル・ルベツキ
■編集 ダグラス・クライズ/スティーヴン・ミリオン
■音楽 アントニオ・サンチェス
■出演 マイケル・キートン/ザック・ガリフィナーキス/エドワード・ノートン/アンドレア・ライズブロー/エイミー・ライアン/エマ・ストーン/ナオミ・ワッツ/リンゼイ・ダンカン
■2014年アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞受賞、主演男優賞・助演男優賞・助演女優賞・録音賞・音響効果賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞主演男優賞・脚本賞受賞、作品賞・助演男優賞・助演女優賞・監督賞・音楽賞ノミネート/LA批評家協会賞撮影賞受賞 ほか多数受賞・ノミネート
■オフィシャルサイト http://www.foxmovies-jp.com/birdman/
シリーズ終了から20年、今も世界中で大人気のスーパーヒーロー“バードマン”。だが、その役でスターになったリーガンは、今は失意のどん底にいる。再起を決意したリーガンは、レイモンド・カーヴァーの「愛について語るときに我々の語ること」を自ら脚色し、演出と主演も兼ねてブロードウェイの舞台に立とうとしていた。ところが、代役として現れた実力派俳優のマイクに脅かされ、アシスタントに付けた娘のサムとは溝が深まるばかり。果たしてリーガンは、再び成功を手にし、家族との絆を取り戻すことができるのか?
本作で強く印象づけられるのは、やはりその魔術のような撮影スタイルです。『ゼロ・グラビティ』で宇宙空間を自在に駆け抜けた撮影監督エマニュエル・ルベツキのカメラは、本作では主人公リーガンの人生の数日間をワンカットと見紛う超長回しでとらえていきます。私たち観客は、流麗なカメラに誘われるうちに、いつの間にか現実と彼の妄想が渾然一体となった奇妙な世界に迷い込んでいます。このトリッキーなスタイルにより、人生を賭けたブロードウェイ舞台を前に、期待と絶望に引き裂かれた彼の内面世界をダイレクトに体感することになるのです。
加えて、本作で絶妙なのは、その鮮やかな遊び心です。実在のハリウッドスターの名前がバンバンネタにされる皮肉な台詞の応酬もさることながら、リーガンを演じるマイケル・キートンの存在感が格別です。彼はご存じティム・バートン監督による初代『バットマン』の主演俳優。実力俳優でありながら、必ずしもリスペクトされているとは言い難い、役柄とシンクロする今現在の彼にしか出せない燻し銀の魅力が存分に発揮されています。 最新の撮影技術と、役者たちのアンサンブル、さらには音楽のアントニオ・サンチェスのドラムの響きが見事に調和したことで生まれた、今までにない浮遊感と酩酊感を与えてくれる至高の一本です。
セッション
Whiplash
(2014年 アメリカ 107分 )
2015年11月28日から12月4日まで上映
開映時間 12:15 / 16:30 / 20:45
■監督・脚本 デイミアン・チャゼル
■製作総指揮 ジェイソン・ライトマン
■撮影 シャロン・メール
■編集 トム・クロス
■音楽 ジャスティン・ハーウィッツ
■出演 マイルズ・テラー/J・K・シモンズ/メリッサ・ブノワ/ポール・ライザー/オースティン・ストウェル/ネイト・ラング
■2014年アカデミー賞助演男優賞・録音賞・編集賞受賞、作品賞・脚色賞ノミネート/サンダンス映画祭グランプリ・観客賞受賞/ゴールデン・グローブ賞助演男優賞受賞/英国アカデミー賞助演男優賞・ 編集賞・ 音響賞受賞、監督賞・オリジナル脚本賞ノミネート ほか多数受賞・ノミネート
■オフィシャルサイト http://session.gaga.ne.jp/
名門音楽大学に入学したニーマンはフレッチャーのバンドにスカウトされる。ここで成功すれば偉大な音楽家になるという野心はかなったも同然。だが、待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの常人には理解できない<完璧>を求めるレッスンだった。浴びせられる罵声、仕掛けられる罠。ニーマンの精神はじりじりと追い詰められていく。恋人、家族、人生さえも投げ打ち、フレッチャーが目指す極みへと這い上がろうともがくニーマンだったが・・・。
『セッション』は名門音楽院を舞台に展開される物語です。とはいえ、本作に登場する鬼教官フレッチャーと、彼の理不尽なしごきに耐え、彼を見返そうと血が吹き出る程ドラムを叩き続ける主人公ニーマン、どちらも音楽を愛するがために熾烈な戦いを繰り広げるわけではありません。
彼らがひたすら追い求めるのは、過去の自己破滅的で偉大なジャズメンの幻影です。ハングリーに試練を課した先にこそ偉大な存在が誕生すると盲信するふたりは、周囲の理解すら拒絶して突き進んでいきます。
熱演、デモーニッシュなまでのテンションで突っ走る映画のテンポが合わさって生み出されるグルーヴが観る者を圧倒していきます。二人の運命はこれからどうなってしまうんだろう、と一気呵成に展開されるクライマックスで映画が終わった後の展開もつい想像させられてしまう一作です。
出典:早稲田松竹映画劇場