【早稲田松竹】12/29(土)~1/4(金) 上映 『乱れ雲』『浮雲』 『山の音』『女が階段を上る時』
★週の途中で上映作品が替ります。スケジュールにご注意ください。
★12/31(月)のみ、19:30『浮雲』を休映させていただきます。何卒ご了承ください。
乱れ雲
(1967年 日本 108分 )
12月29日-2019年1月1日上映
開映時間 13:00 / 17:25
■監督 成瀬巳喜男
■脚本 山田信夫
■撮影 逢沢譲
■編集 大井英史
■音楽 武満徹
■出演 加山雄三/司葉子/草笛光子/森光子/浜美枝/加東大介/土屋嘉男/藤木悠/中丸忠雄
■パンフレット販売なし
©東宝
海外大使館への赴任が決定した通産相のエリート江田宏の妻である由美子は、妊娠三ヶ月で夫と同行する事になる。そんな幸せの絶頂だった由美子だが、不幸のどん底へ突き落とされる事になる…。
一 筋縄では行くことの出来ない程の、目まぐるしい運命の激動に翻弄されながら、揺れ動く女心をじっくり描いた秀作。交通事故が出会いと別れを設定する主要動 機となり、男と女の反撥と牽引の推移が入念に描かれる。撮影の十和田湖の風光が加わって、成瀬本来の抒情性が引き出されている。
『帰ってきた若大将』で主演を勤める加山雄三と、後に『犬神家の一族』『女帝春日局』ですばらしい演技力を見せた草笛光子、『福耳』では独特の存在感を見せつけた司葉子共演作。撮影中から既に体調を崩していた成瀬は、本作を遺作に、翌年この世を去った。
浮雲
(1955年 日本 124分 )
12月29日-2019年1月1日上映
開映時間 10:40 / 15:05 / 19:30
★12/31(月)は19:30の回休映
■監督 成瀬巳喜男
■脚色 水木洋子
■原作 林芙美子
■撮影 玉井正夫
■監督助手 岡本喜八
■音楽 斎藤一郎
■出演 高峰秀子/森雅之/岡田茉莉子/中北千枝子/木村貞子/山形勲/加東大介/瀬良明
■1955年キネマ旬報ベストテン第一位
■パンフレット販売なし
©東宝
幸田ゆき子は戦争中タイピストとして仏印に渡り、そこで農林省の技師、富岡と知り合った。二人は愛し合うようになったが、そこで終戦を迎えた。遅れ て引き上げたゆき子は富岡を訪ねたが、彼は妻と別れておらず、ゆき子に対する態度は煮え切らないものだった。途方に暮れたゆき子は外国兵の囲われ者になっ た。ある日富岡が訪ねてくると、憎まれ口を叩きつつ、やはりゆき子は気持ちが揺らいでしまう…。
「俺にできないシャシンは、溝口の『祇園の姉妹』と成瀬の『浮雲』だ」と小津安二郎監督の言葉が伝えるように、本作は成瀬の集大成であり、また、日本映画史に残る名作である。戦中戦後の混乱期にあって、ただ愛欲の赴くままに互いを拠り所とし、流され落ちていく男女を見つめる。
原作は林芙美子の完成した最後の長編で、成瀬も最後の林文学映画化の思いで挑んだ。ロケ嫌いだった成瀬は、そのほとんどをセットで撮影。美術の中古智、撮影の玉井正夫の丁寧な仕事ぶりも、主演の高峰秀子、森雅之の名演と共に作品を輝かせている。
山の音
(1954年 日本 95分 )
2019年1月2日-1月4日上映
開映時間 10:20 / 14:15 / 18:10
■監督 成瀬巳喜男
■原作 川端康成
■脚本 水木洋子
■撮影 玉井正夫
■編集 大井英史
■音楽 斎藤一郎
■出演 原節子/山村聡/上原謙/杉葉子/長岡輝子/中北千枝子
■パンフレット販売なし
©東宝
尾形信吾はこの頃、息子である修一の嫁・菊子が不憫でならなかった。修一と菊子には子供がなく、修一は信吾が専務を務める会社の社員だったが、ほかに女を 作り、毎晩遅い帰りが続いていた。愚痴もこぼさず、じっと耐えている菊子を信吾はなにかと気遣うが、夫婦の間はますます冷え切っていくばかりで…。
『乙女ごころ三人姉妹』『舞姫』に次ぐ川端康成の小説の映画化。原作は連作短編で、映画化の時点では未完のため、結末は水木洋子が創案した映画オリジナル。夫のとの仲の冷え切った嫁と彼女を不憫に思う義父のほのかなエロティシズム漂う心の交流を描く。
女が階段を上る時
(1960年 日本 111分 )
2019年1月2日-1月4日上映
開映時間 12:10 / 16:05 / 20:00
■監督 成瀬巳喜男
■製作・脚本 菊島隆三
■撮影 玉井正夫
■編集 大井英史
■音楽 黛敏郎
■出演 高峰秀子/森雅之/団令子/仲代達矢/加東大介/中村鴈治郎/小沢栄太郎/淡路恵子
■パンフレット販売なし
©東宝
圭子は夫を亡くし、銀座のバーで雇われマダムとして働いている。ある日佳子は、中国人オーナーに売り上げが減ったことを叱責された。上客の美濃部 が、佳子の下で働いていたユリに店を持たせ、その店に行くようになっていたからだ。ユリの店は繁昌していた。そのうち佳子は店を変えた。
ある日、ユリが狂言自殺をするつもりで誤って本当に死んでしまった。葬儀の席で、そ知らぬ顔で現れた美濃部にくってかかった佳子は、酒と興奮のためか血を吐いて倒れてしまう…。
タイトルは、夫を失い、銀座の高級バーで働くヒロインの店がビルの2階にある事にちなんでいる。
前作『コタンの口笛』で新境地を開拓した成瀬だが、本作では『用心棒』『赤ひげ』など黒澤組でおなじみの菊島隆三がオリジナル・シナリオを書き下ろし、得意の分野である“女性映画”に立ち戻った。
水を得た魚のように流麗な演出が快調で、興行的にもヒットを記録。雇われマダムを演じる高峰秀子のナレーションが、華やかな夜の銀座に蠢く人々の虚実を綴っている。高峰は本作で衣装も担当。
※文章は「成瀬巳喜男―透きとおるメロドラマの波光よ」(フィルムアート社刊)、「成瀬巳喜男を観る」平能哲也編・著(ワイズ出版刊) より抜粋